3Dプリンタの選定
はじめに
プリント基板をおこしたものの、それを収めるケースを作る前に放置してしまったり、
ちょとした部品がサッと手元で作れたらなーと思うことが度々あったので、自らを追い込む意味もかねて思い切って3Dプリンタを買うことにしました。
自分で3Dプリンタを選定するにあたり、先人のブログエントリは大いに参考にさせていただきました。
ただ、買った3Dプリンタを紹介しているブログエントリは多いものの、
どう考えて選定したかといったエントリがあまり無いような気がしたので、本エントリではその点を書きたいと思っています。
購入したプリンタ
Original Prusa i3 MK2sです。
(今日見たらOriginal Prusa i3 MK3 公開されててMK2sも値下げされてた。マジカヨ)
選定のポイント
- 3D Printer Buyer's Guideや3D HUBSでトップスコア
- 積層ピッチは標準で200 um、最高精度で50 umと私の用途では十分で、出力された造形物を見ても綺麗だと感じた
- キットなら$5991とランクインしている機種の中で突出して安い2(超重要)
- ベッド平面のキャリブレーション機能有り
造形方式の理解
まず、3Dプリンタにどんな物があるのか知らなくては話が始まりません。 調べてみると3Dは造形方式で大別できそうです。 3Dプリンタの造形方式はいくつかあるようですが、ここではデスクトップ型として普及している物のみ3検討します。 該当するのは下記の方式のようです。
- SLA(光造形方式)
- FDM(樹脂積層方式)
SLA
エポキシ系液体樹脂やアクリル系液体樹脂に紫外線光を照射することで造形する方式。最近ではLEDを使用した安価なモデル4も登場しているようです。 SLA方式の3Dプリンタがどのように造形するかはこちらの動画が分かり易かったです。
- メリット
- 高精度(10 ~ 25um程度の物が主流,FDMは50 ~ 100 umが主流)
- デリット
- 装置自体のコストが高い
- ランニングコストが高い
- 紫外線に弱い(樹脂材料に起因する問題)
- 強度が出ない(樹脂材料に起因する問題)
- 代表機
FDM
熱で溶かした樹脂フィラメントを積層する方式。 デスクトップ型ではこちらの方が採用率が高く3Dプリンタと聞いて多くの人が思い浮かべるであろうタイプです。 今回購入した3Dプリンタもこちらの方式。
- メリット
- 使用できる材料の種類が豊富(ABS, PLA etc.)
- 機体のコストが安い
- ランニングコストが安い(物によるが2~5000円/kg 程度)
- デリット
- 代表機
機種の選定
まず自分に合った機種を見つけるために、 使用目的を明確にした上で下記の複数の観点から選定していきます。
- ギヤ等のメカ部品も出力したい
- フィギュアを作るつもりは無い
- あくまでプロトタイプ用(高精度が必要ならDMM.make等の業者に出す)
ひとまず思いつくのはこれぐらい。
造形方式の観点
造形方式によって大別できそうだったので、どちらにするか決めます。 私の場合はある程度強度の出る部品が欲しいのと、フィギュアのような物を作るつもりは無かったので ABS樹脂で造形できるFDM方式の方が良いだろうとあっさり決まりました。
予算の観点
本当は性能だけを見て決められれば良いのですが、
残念ながら私の懐事情ではコストというのはとても重要なポイントとなってきます。
私が考えていた予算の目安は10万円程度、どんなに出しても20万円が限界として検討しました。
そもそも先に書いた様に最終成果物で高精度な物を出すときには業者に任せるつもりなので、
ここで30万クラスの機器を買う必要は無いと自分に言い聞かせ思います。
もちろん良いに越したことは無いですが。
情報量の観点
私がハード、ソフトに関わらずツールを選ぶときの基準は長いものに巻かれろです。 ユーザの多いツールは実績があることは何より、トラブルが起きた際の情報にアクセスし易いというメリットがあります。 3Dプリンタを使うことそのものが目的であればこれにこだわる必要は無いのですが、 3Dプリンタで出力したパーツを使ってガジェットを作る方に注力したいので、素直にメジャーな物を使います。
候補機種のピックアップ
長いものに巻かれろということで、
3D Printer Buyer's Guideと
3D HUBSの両者に記載されている上位機種から
上記の選定条件にマッチする物を選定していきます。
(2017年8月時点)
DaVinciシリーズは国内ユーザが比較的多いような気がしますが、
上記レビューサイトでの評価は可もなく不可もなく、
その他のサイト等でレビューを見ると評価が割れているようなので
今回は選定から外しています(前モデルはフィラメントでも色々言われているようですし)。
候補機種の絞り込み
これら海外の3Dプリンタを購入するにあたり、 故障やメンテナンスサポートは日本のクオリティを期待すると痛い目を見る気がしたので なるべくならば自分でメンテナンスができるオープンハード/オープンソフトの製品を選定しようと思います。 ここでオープンでない製品は下記製品です。
- Zortrax M200
- CEL Robox
また下記の製品はヒートベッドが付いていないということで、 ABSの造形をする際に問題が出てきそうなのでこちらも対象外とします。
- Printbot Simple
最後に下記の製品が残りました。
- Original Prusa i3 MK2s
- LulzBot Mini
- Rostock MAX v2
LulzBot Miniはフィラメントが3 mmです。Amazon等のECサイトを見ると若干ですがフィラメントの入手性は3 mmよりも1.75 mmの方がよさそうに感じます。
Rostock MAXは少数派なデルタ型の3Dプリンタである点がマイナスに感じました。
最後にOriginal Prusa i3 MK2sですが、価格も安くP.I.N.D.A probeによるベッドレベリング機能もあり、
オプションを購入すればマルチマテリアル対応も可能になるということだったので、
最終的にOriginal Prusa i3 MK2sを購入することにしました。
また、Original Prusa i3 MK2sはreprap系の3Dプリンタなので、同じオープン系3Dプリンタの中でも比較的情報が豊富にあることも決め手でした。
ベッドレベリング機能に関する動画はこちら。
XYZ軸それぞれのキャリブレーションをしてくれるよう。
実際に使用してみてのまとめ
個人的には満足しています。
比較的安価なモデルかつ組み立てキットだったので造形精度などに不安がありましたが、
Original Prusa i3シリーズについている P.I.N.D.A probeのおかげでしょうか、厳密なキャリブレーションをせずとも必要十分な精度で出力されています。
こちらはサンプルデータを出力したところ。
ただ、夜間の音は少々気になり、夜間でも動かせるよう下のような防音防振BOXに入れて運用しています。
もう少し色々触ってみてノウハウがたまったら、また記事にしてみようと思います。